プロフィール

かわかみ ひろひこ - トラウマ・セラピスト
ソマティック心理カウンセラー
かわかみ ひろひこ

■2003年に教え始め、2005年4月にソマティック・エデュケーターとして起業。有名な楽器店や大学で講座を行いつつ、個人セッションを中心に活動する。

■2007年から2008年にかけて、吉本武史先生より、臨床心理技法を学ぶ。

■10数年のサラリーマン時代に勤務先の倒産や再建に接する。それまで学んだ心身の健康をケアするメソッドによって、過酷な労働環境のなかで、精神的・肉体的健康を損なわずに生き延びる

■SETI認定ソマティック・エクスペリエンス・プラクティショナー
 ATI認定教師 

自律神経の働きとバドミントンの代表選手の賭博問題について

2016年4月に、バドミントン代表選手や、次代に担うと期待された有望な選手たちが、違法な闇カジノ店で賭博していたことが報道されました。総額で1000万円以上も賭けていたという報道がなされています(2016/4/8 19:56 日本経済新聞オンライン)。

 

それらの報道を見ていて、違和感があったので、その違和感について書きます。

 

まず主だった報道の例として、以下を引用します。

 

“バドミントンの桃田賢斗選手と田児賢一選手が違法カジノ店で賭博をしていた問題に関し、遠藤利明五輪相は8日の閣議後の記者会見で「事実とすれば、遺憾というよりも、大変怒りを感じる」と述べた。2020年の東京五輪・パラリンピックへの影響について、「いい影響ということはあり得ない。国民の不信を買い、盛り上がりを阻害する」と懸念を示した。

馳浩文部科学相は「情けなく思っている。トップアスリートとしてちやほやされて、勘違いしているんじゃないか」と指摘。その上で「各団体のトップは自分たちの団体が抱えている選手が大丈夫なのか見直してほしい。今後の対応を待ちたい」と述べ、日本バドミントン協会に限らず、他の競技団体にも自主的な調査を促した。” 五輪相、「怒りを感じる」と苦言 賭博問題 2016/4/8 12:24 日本経済新聞オンライン

 

“(前略)日本オリンピック委員会(JOC)の橋本聖子選手強化本部長は19日、「強化をしてもこういう問題があると台無し。人間力向上が強化対策の一つだと改めて感じた」と危機感をあらわにした。

「人間力強化をテーマに監督やコーチとの会議を重ねてきた」というが、選手には伝わっていなかった形だ。今後は強化本部が選手側と直接話し合っていく案も示した。〔共同〕” JOCの橋本聖子氏「強化しても台無し」 バドの賭博問題で 2016/4/19 19:45 日経新聞オンライン

 

“(前略)朴柱奉監督は「選手の人格的教育ができていなかった。すみません」と沈痛な面持ちで謝罪した。(中略)朴監督とともに報道陣に対応した舛田圭太コーチは問題の背景に指導者側の認識の甘さがあったとして「近年急激に賞金総額が上がっていたが、こうした金額が入るとこうなる、という予測ができなかった」と後悔をにじませた。

両者とも日本協会や各選手の所属先と連携しながら、再発防止に取り組むと強調。(後略)” バド代表監督「教育できていなかった」 賭博問題で謝罪 2016/4/18 8:49 日本経済新聞オンライン

 

“なぜやめられなかったのかと問われ、「スポーツマンとして勝負の世界で生きている以上、ギャンブルというものに興味があり、抜けられない自分がいた」。

違法行為について謝罪する場。これでは「スポーツマンだから違法なギャンブルもするんです。大目に見てください」と言い訳しているようなものだ。スポーツで結果を出せば何をやっても許される。桃田が陥った悲しい勘違いがこの言葉に集約されている気がした。(中略)

違法行為であるという認識はあったという。だから余計に罪は重いわけだが、結局は自分の立場を勘違いした、誘惑に流されてしまう弱い人間だったということだ。この勘違いはスポーツ選手に限らず、政治家や官僚、有名タレントら世間から注目されたり、社会への影響力を持ったりする「勝ち組」に必ず仕掛けられるワナだと思う。

ただ、その意味でスポーツ選手が他の分野の成功者よりも危うい場所にいるのは確かだ。スポーツの勝者を無条件に称賛する、結果さえ出せばすべてが許されると思わせる風潮が、選手の周囲だけでなく社会全体にある。

本来はスポーツ選手としての成功と人間性や品格とはまったく別のものなのに、厳しい鍛錬に耐えて高い技量を身につけたトップアスリートたちは人格的にも優れた理想の人間だと勝手に思い込んで持ち上げる。人気タレントらも同じ扱われ方をすることがあるが、普通の若者なら「自分は特別な人間」と勘違いしてしまう。スポーツを伝えるメディアの一員として、責任は我々にもあると思った。

(後略)”男子バドミントン・桃田を勘違いさせたもの (編集委員 北川和徳 2016/4/15 6:32 日本経済新聞オンラインニュース)。この方は、マスメディアの立場にいる人間として自らも反省し、最後に再起して欲しいとエールを送っているので、どちらかというと良心的な方です。

 

著名な方たちのこういった不祥事が起きたときに、報道される内容には、パターンがあります。

(1) 組織の長が謝罪する。社会人としての教育がきちんとできていなかった。これからはきちんと人間教育をしていきたい等々。今回のケースでは、バドミントン日本代表監督とコーチがそのように発言したと報道しています。

(2) さらに上部の組織の長は、各団体の長に調査と教育をするように指示する。今回のケースでは、文部科学大臣がそのように発言したと報道されています。

(3) 上部組織と各団体のあいだにいる中間の組織の長が、直接選手と話し合いたいと発言することもあります。

特に具体的な内容は示されていませんが、おそらく精神論を語るのでしょう。今回のケースでは、日本オリンピック委員会強化部長がそのように発言したと報道されています。

(4) 不祥事を起こした個人の人間性を問題にしたり、人格攻撃をしたりする。今回のケースでは、文部科学大臣の発言、新聞の編集委員の論説。

 

 

おそらく、JOC(日本オリンピック委員会)やバドミントン協会などでは、これから賭博などの反社会的な行動をしてはいけないという研修や講習が、強化選手や準強化選手を対象に開催されるでしょう。

 

4月25日に日本相撲協会違法賭博薬物排除で研修会を開催しましたが、冒頭の挨拶は閣僚のオリンピック担当大臣が行い、講師は元警視庁組織犯罪対策部長の方が務められるそうです。(相撲協会、違法賭博・薬物排除で研修会 2016/4/25 14:13 日本経済新聞オンライン)を参照。

 

講師の肩の経歴から、おそらく倫理的な問題点と、そのような違法行為に手を染めて発覚したときに、どのような社会的経済的制裁を受けるのかということに関する研修だと考えられます。

 

しかし、報道されているように本人も、違法行為だと重々承知の上で行っているのですから、選手の方たちの記憶から今回の事件の記憶が薄れ、恐怖も薄れてきたら、おそらくそのような研修内容では、再発は防げないでしょう。

 

とても残念なのは、上記に引用した新聞の編集委員の方の発言です。再度引用しますが、

“なぜやめられなかったのかと問われ、「スポーツマンとして勝負の世界で生きている以上、ギャンブルというものに興味があり、抜けられない自分がいた」。

違法行為について謝罪する場。これでは「スポーツマンだから違法なギャンブルもするんです。大目に見てください」と言い訳しているようなものだ。スポーツで結果を出せば何をやっても許される。桃田が陥った悲しい勘違いがこの言葉に集約されている気がした。”)”男子バドミントン・桃田を勘違いさせたもの (編集委員 北川和徳 2016/4/15 6:32 日本経済新聞オンラインニュース)。

 

賭博を行った選手の発言を、「何をやっても許されるという悲しい勘違いをした」と一刀両断にしていることです。

実はこの発言にこそ、今回の事件の原因を知るための、そして再発防止するための大きな糸口が隠されています。

 

第一線で活躍されているスポーツ選手の方たちは、競技で高いパフォーマンスを出すために、そして競技によっては相手と対峙して競り勝つために、精神肉体を鍛え、そのような高度なパフォーマンスができるように調整します。

 

よく知られる具体的な内容を挙げると、交感神経活性化し、ノルアドレナリンアドレナリンなどの神経伝達物質が大量に分泌される必要があります。

 

そして、選手によっては、日常生活においては、その交感神経の高まりをうまく減らすことができる人たちもいます。その方たちは、競技でたかまった交感神経の脱活性化に成功し、日常の社会生活において周囲協調して、社会的に生活することができます。

 

ところが、競技の際の交感神経の活性化と、ノルアドレナリンやアドレナリンなどの神経伝達物質の大量の分泌は、そのような状態の脱活性化に成功しないと、日常の社会生活において、とても困ったことを引き起こします。

小さな物音にものすごく敏感に反応するようになる

怒りっぽくなる

倫理的にご自分をものすごく縛って、周囲への過剰な反応を抑えこむ。

 

あるいは、競技の際の交感神経の活性化と、ノルアドレナリンやアドレナリンなどの神経伝達物質の大量の分泌、それ自体が大きな刺激ですが、そのような刺激を日常生活においても生理的に求めがちになりますと、とても困った事態が起こりえます。

例えば、反社会的な行動や犯罪行為に走る人もいます。例えば、賭博や性犯罪薬物依存など。そのようなことをしてはいけない、もし発覚したら大きな不利益を被ることは理屈ではわかっているのです。しかし、脳幹を中心とする生理的なシステムが求めて、大脳を中心とした理性では押さえくれなくなる。

 

 

あるいはそのような状態から逃れるために、ますます交感神経を活性化させる活動をします。例えば賭博や麻薬や性犯罪。その活動の際の交感神経の活性化のピークの後の、交感神経が少し落ち着いたときの感覚を得るために反社会的な活動をすることもあります。結果的には、日常のベースラインよりももっと交感神経が活性化することになるので、交感神経の脱活性化の役には立たないどころが、反対の作用があります。

 

もちろん倫理的に自分自身を強く縛って、そのような誘惑を耐えることができる人もいますが、生理的にも精神的にもその重圧はかなりのものになります。

 

 

今回の報道を見る限りにおいては、政治家の方たちもJOCも競技団体もマスメディアも、精神的に重圧を掛ける方向に向かうようです。

 

しかし、それでは根本的な解決にはありません。例え選手たちが反社会的な行動を行うことを防ぐことができても、彼らが生理的にも精神的にもかなりの負荷を掛けることになるので、自分らしく生き生きとすることができなくなります。

 

そうではなくて、生理的に交感神経を脱活性化させる技術を選手の方たちに身につけていただく必要があるのです。ソマティック・エクスペリエンス・トラウマ・アプローチはけっこうおすすめです。

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